ロレックス
ロレックス デイトジャストの修理・オーバーホール費用や故障、トラブルの原因や対処方法など
ロレックスは高級時計の代名詞であり、世界的に有名な時計ブランドです。高い堅牢性と高精度が魅力の時計ですが、定期的なオーバーホールが必要です。
オーバーホールとは、腕時計の分解洗浄のことを言います。オーバーホールの作業の流れは、内部のムーブメントの部品をすべて分解し、点検、洗浄、注油をして再び元通りに直す作業です。車に車検が必要なように、時計にも定期的なメンテナンスが必要です。
機械式腕時計のムーブメントは100以上の小さな部品で組みあがっています。そのため外から見て問題なく動いていても、内部では小さな部品に異常が発生していることがあります。そのまま異常を放置してしまうと、他の部品にも悪影響が広がり、最終的に腕時計の故障につながってしまいます。
腕時計が壊れてから修理しようとすると、交換部品の費用がかさんで高額になったり、修理自体ができないほど壊れてしまっていたりします。そのため、腕時計が通常通り動いていても、点検のために定期的にオーバーホー ルを行う必要があります。小さな不具合を早期に見つけることで、腕時計を長期間使い続けることができます。
また機械式時計のムーブメント内部には油が塗布されています。この油は時間が経つと、乾いたり変質したりして周りの部品の動きを悪くしてしまうため、定期的に塗り直す必要があります。
機械式時計は精密機械のため、車の車検と同じように時計も定期的なメンテナンスを行う必要があります。
この記事では、オーバーホール費用や故障、トラブルの原因や対処方法などを解説します。当店でお預かりしたロレックスの修理事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- ロレックス :オーバーホールの間隔は?
- ロレックス :オーバーホールとは
- ロレックス のオーバーホール費用
- ロレックス :当店のオーバーホール事例
- ロレックスが動かない時の原因:時計外部が要因
- ロレックスが動かない時の原因:時計内部が要因
- ロレックスが遅れる原因
- ロレックスが進む時に考えられる原因
- ロレックスの時計が進む原因
- リューズ(クラウン)のトラブルの原因
- ガラスのヒビ・割れの交換
1.ロレックス :オーバーホールの間隔は?
ロレックスのオーバーホールの推奨期間は3~5年に一度と言われています。長年メンテナンスをせずに使い続けていると、故障してしまうことがあります。時計は小さな部品が組み合わさって動いているため、最初は一つの小さな部品の故障であっても、他の部品に連動して壊れてしまうこともあります。そうなると多数の部品自体を交換しなければいけないため、部品代がかさみ結果的に修理費が大幅にかかってしまいます。そのため、たとえ壊れていなくても定期的なオーバーホールをお勧めいたします。
2. ロレックスのオーバーホールとは
例として、ロレックスデイトジャストのオーバーホールは次のような手順で行われます。
- ケースからムーブメントを取り出す
- ムーブメントの部品を分解し、破損している場合は交換する
- 分解した部品を超音波洗浄機にかけ洗浄する
- 洗浄が完了した部品を元通りに組み上げ、必要な場所に注油する
- ムーブメントが組み上がった状態で精度調整を行う
オーバーホールでは時計の状態や動作に問題がないかを確認し、すべての部品を洗浄します。そして歯車など必要な場所に専用の油を塗布します。これは摩耗を防ぐためのものであり、長い期間塗り直さないと劣化や乾きによって部品に悪影響を及ぼすことがあるため、重要な工程です。
3.ロレックス デイトジャストのオーバーホール費用
3.1 ロレックス正規店
1つ目は、ロレックスの正規メーカーである日本ロレックスへ依頼する方法です。この方法は、安心安全ですが、その分費用と納期がかかります。
ロレックスのデイトジャストの場合は基本技術料金で約5万円程度(2022/1 時点)、修理内容によって異なりますが、一般的には交換部品と合わせて約7~10万円、2~3ヶ月の期間がかかると言われています。ロレックスが動かない/状態が悪い場合は、多くの部品交換が発生します。
時間とお金に余裕がある方は、日本ロレックスへ依頼すると良いでしょう。
3.2 民間の時計修理店
2つ目は、民間の時計工房へ依頼する方法です。民間の時計工房の特徴は、日本ロレックスへ依頼するよりも費用が大幅に安いという点です。時計工房によって異なりますが、平均で30%~50%近く安くなります。また、修理期間も短く、平均で1~2ヶ月、早いところでは2~3週間で仕上がるところもあります。
しかし民間の時計工房は、個人で経営しているところから、全国にチェーン展開しているところまで、さまざまな店舗があり、技術力にも差があります。そのため、各時計工房の過去の実績や時計職人が在籍しているかを確認しておく必要があります。
匠工房では、国家資格の1級時計修理技能士のなかでも20年以上の経験豊富なスペシャリストたちが在籍しています。ロレックスに精通した技術者によるメンテナンスサービスを提供していますので、安心してご依頼ください。
4.ロレックス:当店のオーバーホール 修理事例
▼ロレックスデイトジャスト69173: 持続時間が短く、遅れが発生。リューズのロックが浅い。
東京都のお客様から、レディースのロレックスデイトジャスト69173のオーバーホールを承りました。
30年近くメンテナンスをしていないということで、巻き上げても持続時間が短く、遅れが発生し、リューズでの巻き上げもできない状況でした。
時計を分解・点検したところ、ムーブメントの油が切れている状態でした。通常ムーブメントの油は数年に1度塗り直す必要があります。他にもゼンマイや3番車、裏蓋パッキンなどの部品の交換が必要でした。それでも長年メンテナンスをしていなかった状況にしては、とても良い状態でしたので、大事に使われていたことが伺えました。
お客様からはこの機会にと、オプションとしてご提案したリューズと受側のチューブ、ガラスの交換もご希望を頂きました。定期的にオーバーホールをすることで、交換部品が少なくなり費用を押さえることができます。オーバーホールを検討している方は、お気軽にお申し込みください。
▼ロレックス オイスター パーペチュアル 67480: 針回し不良・リューズがガリガリする。止まりがちだった時計が、完全に止まってしまった
京都府のお客様からロレックス オイスター パーペチュアル 67480の修理ご依頼を頂きました。お客様の時計は、ムーブメントの油劣化に加えて、リューズ操作/針回しの際に、ガリガリする症状がございました。
機械式時計の動力源であるゼンマイ、 マキシン(リューズについた軸)と連動しているツヅミ車、分針を動かす2番車、ゼンマイの巻き上げの際に逆回転を防止するコハゼを交換致しました。
納品前の動作確認ではリューズ操作もスムーズになり、当初はブレスの間や裏蓋の溝に汚れが溜まった状態でしたが、オーバーホールに含まれる洗浄サービスで輝きを取り戻しておりました。
デイトジャストからデイト表示を除いた外観のオイスター パーペチュアル は操作もしやすく、大きすぎず小さすぎず実用性が高い時計です。
▼ロレックス エアキング114234: 突然止まった。時計を振るとカタカタ音がする。
神奈川県のお客様からロレックス エアキング114234のオーバーホールを承りました。 止まりに加えて、内部の異音(カタカタ音)は、ローター真の破損が原因でした。ローター真とは、自動巻きの時計に必要不可欠な部品であるローターを中心で支えている部品です。
定期メンテナンスを実施していない状態でご使用されていると、ローター真に負担がかかり摩耗してしまうケースが多いです。
ケースや部品も耐久性に優れ丈夫なロレックスは、内部の油が劣化していても部品が破損していない限り動作する為、5年以上定期メンテナンスをされずにご使用されるお客様が非常に多いです。いざ止まってしまった場合に、交換部品が複数発生する恐れもございますので、大事な時計は定期的なメンテナンスをお勧め致します。
5.ロレックスが動かないときの原因:時計外部が要因
ロレックスが動かないときは、大きく目に見える外側の部分と内部のムーブメント部分のどちらかに大別できます。まずは時計外部の要因を見ていきましょう。
5.1 ベゼルが動かない
ロレックスの防水時計には、逆回転防止ベゼル、GMTマスターには回転ベゼルが搭載されています。このような時計は、ベゼルとケースの間に埃や汗、汚れなどが詰まると動かなくなってしまいます。ブラッシングや日常の手入れで動くことが多いですが、まれに時計内部にゴミなどが入り込んでいると動かなくなってしまうことがあります。こういった場合は、上記で紹介した専門業者に依頼しましょう。
5.2 ケース・ブレスレットの破損
ケースやブレスレットが破損している場合、内部のムーブメントにも影響が及んでいる可能性があります。ロレックスの外装は非常に頑丈に作られているため、外部のケース、ブレスレットが破損するほどの衝撃が時計に加わっているということは、内部のムーブメントにも強い衝撃が加わっていることが考えられます。ケースやブレスレットが破損し、動かなくなっている場合は、早急に修理を依頼したほうが良いでしょう。
5.3 文字盤・針の破損
ロレックスが動かなくなった際に、同時に針が動かないと言う場合は、針を動かす内部の部品に何らかの異常が発生していることが考えられます。また、文字盤が汚れている場合や水が乾いたような跡がある場合は、内部に埃やゴミ、または水が入り込んでいることが考えられます。
6.ロレックスが動かない時の原因:時計内部が要因
ロレックスが動かない場合の、時計内部の要因を解説します。
6.1 リューズの異常
時計が動かない際にリューズも動かない場合、リューズの隙間に汚れやゴミが詰まっている、リューズが錆びているなどの原因が考えられます。この場合、無理に動かそうとすると、折れてしまったりリューズのネジ山が潰れてしまったりします。そのため、無理な力は加えずにそのまま専門店に修理依頼をするようにしましょう。また、万が一リューズが折れてしまった場合はリューズを一緒に持ち込むと良いでしょう。状態によってはそのリューズを使って修理できる可能性もあります。
6.2 ゼンマイが原因
ゼンマイは機械式時計の動力源のため、使っているうちに金属疲労により切れてしまうことがあります。リューズを巻き上げても空回りするような感触がある場合、ゼンマイが切れている可能性が高いです。また、ゼンマイは時計の精度を左右する部品のため、遅れや進み、精度が出ないなどの場合は、ゼンマイの異常も考えられます。
6.3 時計内部へ水が侵入している
時計の内側へ水が侵入した場合、早急な修理が必要です。なぜなら水が入ると部品が錆びてしまい、錆びた部品がさらに他の部品にまで悪影響を及ぼすからです。ロレックスはオイスターケースという高い防水性のケースを採用していますが、それはあくまでも正しい使い方をした場合に限られます。
リューズがしっかりと閉まっていなかったり、温泉につけてしまったりするといった誤った使い方をすると、防水時計であっても浸水してしまいます。水の侵入の心当たりがある場合は、早急に修理依頼をしましょう。
6.4 潤滑油の劣化
時計のムーブメントには、部品同士の摩擦を軽減するため、潤滑油が塗布されています。しかしこの油は、時間が経つと劣化したり乾いたりしていまいます。そのため定期的なオーバーホールで油を新たに塗る必要があります。しばらくオーバーホールをしていない場合、潤滑油が劣化または乾いていることが考えられます。
6.5 磁気帯びが原因
時計の磁気帯びも原因として考えられます。磁気帯びとは、時計内部に磁気が発生している状態のことです。時計のムーブメントは、金属でできていますが、金属は強い磁気にさらされると、磁気が移ってしまう性質があります。
スマートフォンやパソコン、カバンのマグネット式の留め具、電子レンジなどは強い磁気を発しています。これらの製品に時計を近づけてしまうと、磁気が内部のムーブメントに移り、磁気帯びしてしまいます。
通常、磁気帯びした時計は、精度が狂うことが多いですが、まれに止まってしまうこともあります。磁気帯びを解消するには、専門の器具で磁気抜きをする必要があります。
7. ロレックスが遅れる原因
ロレックスは時計好きであれば、誰もが憧れるブランドです。時計ブランとしての知名度はもちろん、高い精度と壊れにくい堅牢性を兼ね備えていることも、長年人気であることの一つです。ではなぜ、丈夫なロレックスでも遅れが発生してしまうのでしょうか。ここでは、ロレックスが遅れる原因とその対処法を紹介します。
7.1 ロレックスの遅れの原因:巻き上げ不足
ロレックスが遅れる原因の1つ目は、ゼンマイの巻き上げ不足です。ロレックスをはじめとした多くのブランド時計は、機械式時計という機構でゼンマイを巻き上げることで動いています。簡単に言ってしまうと、ゼンマイ仕掛けのおもちゃと仕組みは同じです。このゼンマイがきちんと巻き上げられていないことによって、ロレックスが動かなかったり時計が遅れたりしてしまうことがあります。
巻き上げ不足の対処法は、毎日きちんとゼンマイを巻き上げることです。
「自動巻き時計だから、毎日時計を着けているから勝手に巻き上がるだろう」と思っていても、あまり動かなかったり着用時間が短かったりすると、十分に巻き上がらないこともあります。
この場合、着用するだけでなくリューズでしっかりとゼンマイを巻き上げる必要があります。リューズを引き出し、だいたい30~50回前後手で巻き上げれば、ゼンマイはほぼ巻き上がります。
このとき注意したいのが、乱暴にリューズを扱わないことです。リューズは細い巻き芯とつながっているため、乱暴に扱うと折れてしまう危険性があります。また、ゼンマイを巻き上げすぎると切れてしまう可能性もあるため、必要以上に巻き上げすぎないように気をつけましょう。
7.2 ロレックスの遅れの原因:故障
ロレックスが遅れる原因の二つ目は、故障です。ロレックス内部の機械は、100以上の小さなパーツが組み合わさって動いています。そのうちの一つのパーツに不具合が発生すると、他のパーツにも悪影響が及んでしまいます。
そのため、定期的に時計の点検・メンテナンスであるオーバーホールを行う必要があります。長年オーバーホールをせずに放置してしまうと、パーツに不具合が発生し、ロレックスの精度に狂いが出たり遅れが発生したりします。
何年にもわたってオーバーホールをしていないという場合は、内部の機械に何らかの不具合が起こっている可能性が高いです。そのため、早急に時計修理店に点検してもらうようにしましょう。
8.ロレックスが進む時に考えられる原因
ロレックスが進むという際に考えられることは、次の2つです。
8.1 機械式時計の範囲内(日差)の進み
「気づくとロレックスが進んでしまっている。故障なので直してほしい」というお問い合わせをいただくことがあります。実際に故障していることも多いですが、話しを聞くと、なかには特に問題がない場合もあります。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
実は、ロレックスの精度は必ずしも正確とは限りません。ロレックスの多くは機械式時計といって、100以上の小さな部品、歯車が組み合わさって動く仕組みの時計です。そのため時計の向きや動かし方、気温や湿度などによって少しずつ精度が変わります。このように、時計が一日にどのくらい進みや遅れがあるかを表す精度を、日差と言います。
そのため「ロレックスが進んでいる」と感じても、実際には機械式時計の日差の許容範囲であることもあります。
8.2 何らかの異常が発生している
わずかな誤差であれば機械式時計の日差の範囲であると考えられますが、大幅な進みや時刻のズレの場合、内部に何らかの異常が発生していると考えられます。
部品の異常や故障はもちろん、磁気の影響を受けて時計の精度が狂ってしまうこともあります。具体的にどこに異常があるのかは、専門の時計修理店に内部を見てもらうことでしか判断ができません。
時計の精度に異常が見られる場合は、なるべく早く時計修理店に依頼するようにしましょう。放置していると、他の部品に影響してより故障がさらに大きくなってしまうこともあります。
匠工房では、ロレックスに異常がある場合の点検やオーバーホールを承っています。無料見積り宅配パックからお申込みいただくと、送料・見積もり・キャンセル手数料無料(※キャンセル時は返送の送料のみ、お客様にご負担いただいております)で対応しています。
「ロレックスの精度に不安がある」「時計修理は費用が高くて気軽に出せない」と悩んでいる方は、お気軽にお申し込みください。
9.ロレックスが進む原因
ロレックスが進む大きな原因の一つに内部の故障があります。そのなかでも特に考えられるいくつかの原因を紹介します。
9.1 磁気帯び
ロレックスが進む原因として、最も多いのが磁気帯びです。磁気帯びとは時計に磁気が発生している状態です。機械式時計は内部のムーブメントが金属でできているため磁気を発生するものに近づけてしまうと磁気が移ってしまいます。
磁気を発生するものは、身近にたくさんあります。パソコンやスマートフォン、電子レンジやカバンの磁石式の留め具などが該当します。とくにパソコンやスマートフォンなどは無意識のうちに時計を近づけすぎてしまうことが多い電化製品です。
- ノートパソコンの上に時計を置く
- スマホと時計を一緒にポケットにしまう
- カバンの留め具に近い内ポケットに時計を入れる
上記のような、ちょっとしたことでも時計は磁気帯びしてしまいます。磁気帯びしてしまうと、専門の機械で磁気を抜く必要があるため「磁気帯びかな?」と感じたらお気軽にご相談ください。
9.2 ヒゲゼンマイの異常
ロレックスの進みとして考えられる二つ目の原因は、ヒゲゼンマイの異常が考えられます。ヒゲゼンマイは機械式時計の心臓部分といえる場所で、精度をつかさどるもっとも重要な部品の一つです。金属製の帯で渦巻状の形をしていて、その精度はとても繊細なものです。
ゼンマイは板状で巻き上げられることに対して、ヒゲゼンマイは巻き上げられることはなく、テンプの振れを一定に保つために存在しています。
髪の毛のように細く、0.001ミリ狂うだけで1日辺り30分も変わってしまうこともあります。
これだけ繊細な部品だと、落下や激しくぶつけるといった強い衝撃を受けるとヒゲゼンマイに異常が発生することがあります。ヒゲゼンマイの中心が歪んだりヒゲゼンマイが絡まったりすると、進みや遅れ、止まりの原因になってしまいます。
また、油や水分がヒゲゼンマイについてしまい、ヒゲゼンマイ同士がくっつく場合や、磁気によりヒゲゼンマイ同士がくっついて、進みの原因になる場合があります。ヒゲゼンマイに異常がある場合は、内部の機械を分解して点検する必要があります。
9.3 内部部品の故障
ロレックスが進む3つ目の原因として考えられるのが、内部部品の故障や油切れです。上記に挙げたゼンマイの異常はもちろん、他の部品が破損しても精度は狂ってしまいます。
強い衝撃で破損するのはもちろん、部品の金属疲労や摩耗により破損してしまう場合もあります。時計は精密機械のため、車の車検と同じように定期的な点検であるオーバーホールが必要です。
9.4 ロレックスの進みに関する当店の修理事例
ロレックスの進みに関する、実際に当店でお預かりした修理事例を紹介します。
20年以上前に購入し、不動になっていたとのことで、依頼をいただきました。10年ほど前には進みが発生していたとのことです。
内部の機械を点検したところ、油劣化、ヒゲゼンマイに油汚れが付着、一部部品が破損していたため、洗浄と部品交換を実施しました。機械式時計は、部品の摩耗するところに油が塗布されていますが、時間が経つと劣化してしまいます。今回も、経年劣化により油が切れてしまい、その影響で部品が摩耗してしまっておりました。
定期的なオーバーホールを実施しないと、部品交換が複数必要になってしまうことが多いです。使っていない時計でも、10年単位で時間が経過している場合はオーバーホールをおすすめします。
時刻が進むためオーバーホールのご依頼いただきました。
部品の分解・洗浄を行い、ヒゲゼンマイの絡みが見られましたので、ヒゲゼンマイの絡み直し、裏蓋のパッキンとゼンマイ、3番車、チューブパッキンを交換しました。ヒゲゼンマイはほんの僅かの差で精度に影響が出てくる部品です。今回は進みでのご依頼だったためヒゲゼンマイの絡みの影響によるものだと考えられます。
またケース・ブレスの磨きもあわせてご依頼いただき、購入時のような輝きを取り戻しました。時計の仕上げ加工は技術力が高くないとケースの形が崩れてしまうため、仕上げ加工の実績が豊富にある時計修理店へ依頼することをおすすめします。
当店では、オーバーホールと合わせて、オプションで外装仕上げ加工も承っています。小さな傷が気になる方は、オーバーホールと一緒にお申し込みください。
10.リューズ(クラウン)のトラブルの原因
「ロレックスを使っていたらリューズが閉まらなくなってしまった」
時計のリューズは、時刻や日付の調整、ネジの巻き上げなどで動かす頻度が高い部品です。内部の機械につながっているため、固くて動かない、飛び出したままで閉まらないと不安になってしまいますよね。
当店でも、ロレックスのリューズに関するご相談をいただくことは多くあります。 そのなかでも今回は、リューズが回らない場合の原因と対策について解説したいと思います。
10.1 リューズトラブルの原因1:異物混入
リューズにトラブルが起こる原因の1つ目は、異物の混入です。リューズのロックを開放すると、ケースとの間に隙間ができます。きちんとリューズのロックがかかっていないとこの隙間に埃や皮脂などの汚れが溜まってしまいます。放置してしまうとリューズ動きを悪くしたり、機械内部へ入り込んだりしていまします。
異物混入の対処法は、日頃からリューズを含めた時計の手入れをきちんとしておくことです。リューズの汚れは、毛先の柔らかい歯ブラシや爪楊枝で取ることも可能です。リューズは乱暴に扱うと破損してしまうため、丁寧に扱う必要があります。これでも汚れが落ちない場合は、専門店に依頼するようにしましょう。
10.2 リューズトラブルの原因2:リューズ部のサビ
リューズにトラブルが起こる原因の二つ目は、リューズのサビです。リューズのサビは汚れが溜まっていたり、リューズがきちんと閉まっていなくて内部に水が入ったりすることで発生します。
リューズがサビている場合は、早急に専門店で修理をしてもらう必要があります。とくに内部に水が入っている場合、リューズ以外にもサビや腐食が広がっている可能性があるからです。
リューズ部のサビを防ぐには、リューズを使用後に最後まできっちりと閉めることです。リューズの操作はなるべく水平な角度で行ったほうが良いです。ペットボトルの蓋で考えるとわかりやすいですが、斜めのまま蓋を閉めても、きちんと締まっていなくて隙間から水がこぼれてしまいます。それと同じで、いくらロレックスとはいえ、きちんとリューズが閉まっていないと、自慢の防水機能も役に立ちません。
10.3 リューズトラブルの原因3:油切れ
リューズにトラブルが起こる原因の3つ目は、内部の機械の潤滑油が切れていることです。ロレックスの機械は、100以上の部品から成り立っていますが、部品同士が噛み合う部分には、潤滑油が塗られています。
しかし経年劣化により潤滑油が切れてしまうと、部品同士が摩耗してしまいます。摩耗した部品は動きが悪くなり、リューズの動きが固くなったり巻き上げ時にガリガリとした感触があったりします。またゼンマイの金属疲労により、精度が悪くなってしまうこともあります。
潤滑油は、定期的なメンテナンスであるオーバーホールを受けることで新たに塗り直しています。また潤滑油が乾いていなくても、油自体が劣化してしまうと凝固し部品ごと交換になる可能性もあります。ロレックスのオーバーホールの推奨期間は3~5年に一度と言われています。時計は精密機械ですので、車の車検と同様、定期的なメンテナンスを行うようにしましょう。
10.4 リューズトラブルの原因4:ネジ山潰れ
リューズにトラブルが起こる4つ目の原因は、ネジ山が潰れることです。ネジ山は、リューズをねじ込む時計のケース側についたギザギザの部分を指します。経年劣化やリューズのねじ込み方が良くないと、ギザギザの部分が削れて平になってしまうことがあります。
この場合ネジ山自体を交換する必要があるため、修理を依頼する必要があります。放置すると飛び出したままの状態になり、防水機能が果たせず、さらに故障につながってしまうため、早めに修理をするようにしましょう。
10.5 リューズトラブルの原因 5: リューズが固くて回らない
リューズトラブルで多いのが、リューズが固くて回らないというものです。この場合、考えられる理由はリューズの操作方法が誤っているか、リューズがサビている、リューズの隙間に埃や汚れなどが詰まっていることが考えられます。
必要以上に力を入れて操作するとリューズが折れてしまう可能性があるため、無理に動かさずに時計修理店に修理を依頼するようにしましょう。
10.6 リューズトラブルの原因6:リューズが抜ける・折れ
リューズは内部の機械とつながった重要な部品の一つですが、強く引っ張るとリューズが抜けたり折れたりしてしまいます。その際にリューズを強く押し込むと、内部の部品をさらに傷つけてしまうリスクがあります。そのためリューズを自分で戻すのは絶対にやめてください。
リューズが抜けてしまった際にはリューズを保管し、時計と一緒に時計修理店に修理を依頼するようにしましょう。時計の状態によっては、リューズをそのまま使用できる可能性があります。またその際、時計のリューズがあったところから埃やゴミが入らないように、時計を密閉した袋に入れるかテープで穴を塞ぐようにしましょう。
10.7 リューズトラブルの原因7:リューズが緩い・ 空回り
リューズが固くて動かないのとは反対に、リューズが緩かったり空回りしたりするという相談も多くあります。リューズが緩かったり、空回りしたりする場合、経年劣化により内部の部品が破損、または摩耗している可能性があります。
ロレックスの機械は、100以上の細かい部品が使われています。このうちの一つの部品に不具合があると、連動して他の部品にも影響があります。また定期的なオーバーホールをしていないと、部品の摩耗を防ぐ油が切れてしまっている可能性があります。油が切れてしまうと、部品の摩耗や破損、ゼンマイの金属疲労などが起こってしまいます。リューズが緩かったり空回りしたりする場合は、リューズ以外の内部の部品に不具合が考えられるため、なるべく早めに専門店に修理を依頼するようにしましょう。
10.8 リューズの役割とは
ロレックスのリューズには、大きく2つの役割があります。1つ目がゼンマイの巻き上げです。リューズは時計の中の動力部分とつながっていて、リューズを巻き上げることによりゼンマイを巻き上げることができます。だいたい50回ほど回せば、ゼンマイは巻き上がります。ただし、手巻き式時計の場合、巻き止まりがあるため、途中で巻き上がらなくなったら、無理に巻き上げないようにしましょう。
2つ目の役割は、時刻合わせや日付調整です。日付表示がついているモデルは、リューズを一段外側に引くとカレンダーを調整ができます。もう一段引くと時計の針を動かすことができます。※ただし日付調整がついていないモデルは、一段引き、24時間針を進めることで日送りが可能です。
時間を合わせる際は、なるべく時計回りになるように針を回しましょう。少しであれば反時計回りでも大丈夫ですが、元々時計回りに動くことを前提として作られていますので、ずっと反時計回りにしていると、故障してしまうこともあるので気をつけましょう。
また午後8時~午前4時のところに時計の針があるときに、日付調整を行うと故障することがあるので、こちらも避けるようにしましょう。ロレックスの日付調整は上記の時刻に少しずつ内部の機械が動いているため、無理に動かしてしまうと部品が破損することがあるからです。
11.ガラスのヒビ・割れの交換
腕時計の風防(ガラス)は、使われている素材により3つの種類に分類できます。
文字板や針を保護するカバーの役目を担い、埃や汚れ、衝撃や水圧などから時計を保護しています。
風防(ガラス)にも種類があり、頑丈さや見た目など素材によって特徴が大きく異なります。
基本的に高級時計に使われる風防(ガラス)は主に下記の3種類があり、デザイン性やコストに合わせて使用されています。
11.1 ガラスの種類:アクリルガラス(プラスチック風防)
プラスチック風防(プラ風防)とよく呼ばれ、主にオールドタイプの時計に使用されています。
サファイアガラスの登場によりあまり使用されなくなりましたが、今でも修理依頼が多いロレックスやオメガによく使用されています。
ミネラルガラスやサファイアガラスに比べるとプラスチック風防は劣化や変色、キズや汚れがつきやすく耐熱性にも劣りますが、その反面、軽量で加工がしやすく割れにくいというメリットがあります。プラスチック風防としての強度を上げるために、形はドーム型で作られることが一般的です。
例として高い場所から固い地面に落下させた場合、ミネラルガラスやサファイアガラスは当たり所によっては粉々に割れてしまい、文字板上にもガラスの破片が入り、文字板にキズをつけてしまう場合があります。
同じような衝撃の場合でも、プラスチック風防はその名の通りアクリル樹脂やプラスチックなどを使用して作られたガラスの為、割れるというよりはキズ、ヒビが入るような状態になります。
ヒビが入った場合は交換をお勧めしますが、サファイアガラスと違いプラスチック風防は小傷程度であれば磨くことができます。
11.2 ガラスの種類:ミネラルガラス(一般的なガラス)
ミネラルガラスは身近にある一般的なガラスを思い浮かべてください。
プラスチック風防に比べるとミネラルガラスはキズが付きにくいメリットがありますが、欠けや割れてしまうことがあります。
(メーカーによっては特殊な加工を行い強度を高めている場合もあります。)
サファイアガラスのような硬度はないですが、キズが付きにくく比較的安価な為、多くの時計に採用されています。
11.3 ガラスの種類:サファイアガラス (強度が高い)
サファイアガラスは人工的に作られたサファイアを素材として作られています。
別名サファイアクリスタルとも呼ばれ、非常に硬度が高くキズや汚れが付きにくいことに加えて耐熱性にも優れており、高級時計に使用されることが多いです。
ただ硬度が高い反面、強い衝撃には弱く、落下の衝撃などで欠けや割れ、当たり所によっては破片が文字板に入ってしまい文字板にキズ、針に破片が挟まって針が変形してしまう場合もあります。
プラスチック風防のように磨くことはできませんので、キズが気になる場合は交換が必要になります。他の風防2点に比べると、値段は高価になります。